バラエティ豊かな太極拳
 太極拳では、攻防を想定した「型」動作を順番に行い、それを「套路」と言います。 套路は多種多様あり、流派の名称(楊式・呉式など)や、単位「型」動作の数(24式・48式など)といった特徴を表わす名前で呼ばれます。
 24式太極拳
 現代中国で編纂された最初の制定拳で、楊式太極拳の主要な24の動作から構成され、覚えやすい入門用の套路「簡化太極拳」として世界中で最も普及しています。 日本の太極拳教室で健康のために教えているのも大抵この24式太極拳です。 競技会や集団演武も盛んに催され、太極拳の表演武術としての側面を伸ばしました。 日本連盟の段級制度では全て24式太極拳ベースの実技試験で技能熟練度が審査されます。
 入門太極拳・初級太極拳
 日本連盟が、24式太極拳より易しく短期間で習得できるよう、それぞれ8つの動作を組み合わせ創った、初心者向けの太極拳です。 入門太極拳・初級太極拳は5級・4級検定の実技科目となっています。
 42式太極拳
 楊式太極拳をベースに、陳式、呉式、孫式の動作を組み合わせて創られた套路で、「総合太極拳」とも呼ばれます。太極拳の各門派の特徴的動作を明確に演ずることが出来、内外の競技会種目として採用されている、見栄えのする套路です。
 太極剣
 徒手で行う「太極拳」のほかに、剣・刀・棍・槍などの器械(武器)を用いた種目もあります。 中でも楊式太極剣をもとに編纂された「32式太極剣」は広く普及しています。 また陳式、楊式、呉式の動作を組み合わせた「42式太極剣」(総合太極剣)は競技会で盛んに行われています。
 太極扇
 扇も一種の武器(短器械)として用いられ、昔の官女たちは護身術として大極扇を覚えたと言われます。 武術に華麗さが加わった種目で、大極扇も入門レベルから上級レベルまで套路は色々あります。
 陳式太極拳
 武術として継承されてきた太極拳は「伝統太極拳」と総称され、うち陳式太極拳は太極拳の源流をなすと言われ、柔軟さや円の動き、震脚(強く脚を踏みならす)、発勁(全身を協調一致させて力を発する)、纏糸勁(らせん状の勁)による動作の連関などの特徴があります。
 楊式太極拳
 陳式を学んだ楊氏が北京に伝え広めた流派で、最も広く行われるようになりました。 動作はのびのびとして大きく、発勁は暗勁(激しい打撃動作を行わない)でゆるやか。 現代の制定拳は楊式をベースに構成されました。
 呉式太極拳
 楊氏門下の呉氏により創始されました。 弓歩の定式(決まり手)での前傾姿勢「斜中寓正」と川の字型の立ち方、緻密な足運びは特徴的。 独特な風格としては、軽快かつ静かで柔らか、動作はとぎれず伸びやかです。
 孫式太極拳
 形意拳の歩法、八卦掌の身法、武式の手法などを統合した太極拳の流派で、開合によって動作を連関し、機敏な進退・転折によって転換するため、一名「開合活歩太極拳」と称されます。
 太極拳推手
 二人が相対して行う太極拳の練功方法。 規定套路では、決められた動作の中で、相手の勁力を感知し対応する能力や技法(攻防の技術)を訓練します。 高度な意識集中が求められ、太極拳の熟練度を高めます。
 長拳・南拳
 中国武術の世界は実に多種多様で、伝統武術としての太極拳・少林拳・形意拳・八卦掌やカンフー映画でおなじみの南派武術などは特に有名ですが、これらを競技スポーツ用に編集した「制定拳」のうち、拳術系の長拳・南拳は、緩やかな太極拳とは対照的に、跳躍・回転などを伴い素早く迫力ある実戦的な動きが魅力的です。
 太極柔力球
 1991年に中国で創案され、太極拳の論理と現代球技の要素を融合させたニュースポーツ。 専用ラケットを使い力を抜いた柔らかい動きでボールを操る、身体に無理のない運動で、誰でも気軽に行うことができます。
 練功十八法
 技の威力を養成する鍛練が「練功」ですが、「練功十八法」の名でよく準備運動として行われるのは、予防医学の運動処方を基礎に中国古来の養生法などを取り入れた健康体操で、音楽に合わせリラックス・呼吸します。