太極拳とは・・・
 太極拳は、中国古来の武術を整理するなかで、自然哲学である陰陽思想と、古代の健康法である導引法や、呼吸法である吐納法などが結合してでき上った拳法の体系であり、単に武術に留まらず健康法、芸術、哲学の側面まで兼ね備えた「東洋の文化」と言えます。
 ゆったりとした動き
 多種多様な中国武術のなかで、太極拳は拳法一般のイメージとは対照的に、コントロールされたゆったりとした動きが特徴であり、円に沿った流れるようなゆっくりとした動作を多く含んでいます。健康、長寿にもよいとされ、中国の朝の公園などで集まって練習している姿はよく知られています。
 実用的な武術
 その特徴から、太極拳を単なる健康体操と思ったり、踊りのように見られることもありますが、攻撃・防御の高度な技術と実用性を備えた、古い歴史のある「武術」が本来の姿です。拳法理論を頭において、健康法としてゆったりとおだやかに表現するとき、芸術性が感じられるほどに高められるのです。
 知的な修練
 太極拳をする時は、動作の仕方や套路の順番といった外見上のこと以上に、意識・動作・呼吸の三者の結合が重視されます。 意識が動作を導き、動作が呼吸と結びつくのであり、套路・動作を覚えて満足、に留まることなく、「気」や「勁」を感じつつ「意を用いて、力を用いず」の境地を求めて内面的にも修練を続けます。
 体力の増進
 太極拳は各人の体力に応じて行える万人向きの運動ですが、長く続ければそれだけ身体能力が向上します。ゆるやかな動きは思いのほか筋力(下肢の持久力や腹筋・背筋等)を使うし、柔軟性・調整力(平衡など運動コントロール)が良ければより高度な技を達成できるので、練習や日常の体力づくりの尺度にもちょうどよいのです。
 しなやかな体と美しい姿勢
 武術としての太極拳では、あまり使われない筋力などを強化しその力を最大限に使うので、姿勢を重視します。他の中国拳法に比べ、大きな筋肉に頼らず強大な力を発揮できるのはこのせいで、修練時は正しい姿勢を得るためにゆっくりと行うのです。
 医学的な効果
 太極拳は、意識を集中し落着いた気持ちで、ゆっくりと筋肉に負荷をかけ関節を動かし、動作に合わせて深い腹式呼吸をする、といった特質により、運動不足の解消、足腰の強化、心臓機能の向上、高血圧の改善、血糖値の低下、呼吸機能の増進、精神の緊張の緩和など多くの医学的な効果が認められています。